東海地方の梅雨明けが発表された一昨日(18日)、愛鷹連峰北東端の黒岳に登ってきた。
梅雨の晴れ間を狙って愛鷹山のどこかの沢か山へ行こうと思っていたのだが、なかなか晴れ間と用事の都合が合わず、梅雨明けの当日となってしまった。
今回の山行の主目的は気分転換なので、気持ちよく歩いて昼飯を食べて帰ってこられればどこでも良かった。
稜線まで短時間で登れて、運が良ければ間近で富士山が見られる、ということで、黒岳を選択した。
9時50分頃自宅を出て、登山口の愛鷹山神社駐車場(標高740m)に到着したのは10時40分頃。
途中の246号バイパスで車線規制の渋滞に巻き込まれなければ、あと10分くらい早く着いただろう。
20台ほど駐められそうな駐車場には、4台の車があり、うち3台は他県ナンバーだった(じつは次の写真は下山してきたときに撮ったものだが、登山開始時と似たような薄曇りの空模様)。
東名から近いので来やすいのかな。
駐車場の利用心得の表示の横に登山届のポストがあったので、「山神社〜富士見峠〜黒岳〜富士見峠〜鋸岳展望台〜富士見峠〜山神社」と書いて提出。
ポストの隣には「黒岳の自然杉群落」と「熊注意‼」の表示があった。
今回も熊鈴とシェラカップをザックにぶら下げて、チリンチリン、カランカランと鳴らして熊よけとした。
駐車場から林道を横切って、登山開始(写真は暗かったためブレている)。
しばらく杉の植林地を登っていく。
林床のフタリシズカの葉の上に、ヘイケボタルがとまっていた。
ヒトリシズカとゲンジボタルの組み合わせのほうが面白かったのにな、と思いながらとりあえずスマートフォンで撮った。
ザックを下ろして OM-5 を出そうとしたところ、ヘイケボタルは飛び立って林の奥へと消えていった。
杉林が尽きて沢の源頭に至るあたりから、登山道はトラバース気味になる。
木々の間から、位牌岳が見えたが、位牌岳や越前岳の方面は雲が出ているようだ。
登山道の脇にイワタバコが咲いていた。
この日、イワタバコの花を見るために、つるべ落としの滝のほうへ行こうかとも考えていたのだが、前々日の雨で沢沿いの道が荒れていそうなので断念した。
今年はイワタバコの花を見ずに終わるかもな、と思っていたので少し嬉しい。
ちなみに、イワタバコが咲いていたのは、次の写真のような具合の登山道の脇。
苔の剥げているところが踏み跡で、トレッキングポールがないと心もとない。
ちなみに、今回はいつものようにトレッキングポールを2本持つのではなく、写真用のモノポッド(一脚)をトレッキングポールの代わりとして使った。
グラスファイバー製の軽量モノポッドで、トレッキングポール2本分の重さ(約500g)である。
山歩きをする人の間で、ポールは2本持ちと1本持ちのどちらが良いかという議論があるようだ。
自分はどちらが向いているかを確認する意図もあって、モノポッドを使った。
儂は1本でもまったく問題ないようだ。
むしろ、ロープやはしごを掴むときには片手が空いているほうがよいので、1本のほうが向いているかもしれない。
長く伸ばしたモノポッドを杖のように突いて、熊鈴を鳴らしながら歩いていて、ふと思った。
修行僧が持っている錫杖(しゃくじょう)には金属の輪が付いていてシャンシャンと鳴るが、あれはひょっとしてクマやオオカミを避けるためのものだったのではないか?
なんてことを考えながら細い山道を登り、愛鷹山荘の横を通る。
無人の小屋だが、夏場はカビ臭そうだ。
冬場は避難小屋として使えそうだが、もはや高齢者の儂は冬山登山で愛鷹山に登ることはあるまい。
愛鷹山荘からひと登りで稜線の富士見峠。
富士見峠とは言うものの、富士山がバーンと見えるわけではない。
北側の杉林の間から、チラチラ見える程度。
富士見峠からの稜線歩きは短く、急な登りになる。
駐車場でみた案内表示の「黒岳の自然杉群落」があるのはこのあたり。
登り切って平坦な尾根道になり、黒岳展望広場に到着。
ベンチがあるところから、富士山がよく見える。
ちょうど宝永火口のあたりに雲がかかっていた。
雲の下の草原はぐりんぱかな。
さらに手前下のほうには富士サファリパークの駐車場が見えた。
ここから黒岳へは大したアップダウンもなく、快適な稜線歩きとなる。
ここまでの登りで汗だくになったので、ブナやイタヤカエデの林を抜ける風が心地よい。
次の写真は、上の写真とほぼ同じ位置から撮ったものだが、OM-5 の HDR(ハイダイナミックレンジ)機能を使ったものだ。
露出の異なる4枚の写真を合成して明所のトビや暗所のツブレを防いでいる。
露出の異なる4枚の写真を連続して撮るので、三脚の使用が推奨されている。
今回モノポッドをトレッキングポール代わりとしたのは、このような撮影方法を試すためでもある。
うーん、普通に撮った写真と、HDR 合成した写真と、どちらがよいだろう……。
さて、稜線の林床は薄く落ち葉に覆われている。
落ち葉の間からは、キノコや背の低い草本が顔を出している。
次の写真はゴマノハグサ科のヤマジオウ(山地黄)。
12時30分、黒岳着。
山頂は芝生の広場になっていて、ベンチがふたつ置いてある。
芝生といっても、オオバコが多い。
登山者の靴に種子がついてきて広がったものだ。
山頂から北側には、大きく富士山が見えた。
本当の山頂は、広場の南側で、三角点(1086.5m)がある。
富士山を見ながら昼食。
広場のベンチは日当たりが良すぎて暑いので、木陰に荷物を広げた。
今回の昼飯はシーフードヌードルと菓子パン。
飲み物は、5月の自治会の清掃活動の際に配られたお茶のペットボトル。
調理用・飲用の水として、500mlのボトル2本を持っていった。
脱水症を恐れて水を多めに持っていったのは良かったが、汗もだいぶかいた(ガーゼてぬぐいがびしょ濡れになったので、ベンチに干してある)。
昼食を摂っているうちに、宝永山にかかっていた雲が移動し、宝永火口や六合目の山小屋がよく見えるようになった。
次の写真は HDR 合成したもの。
銀塩フィルムのポジっぽいかもね。
山頂の南側にはシカの踊り場があって、草がはげていた。
シカはそこそこ多いようで、植生に影響を与えていると思う。
林床のササ類はかなり貧弱になり、日が当たる林床にはマツカゼソウ(ミカン科)やアセビ、ミツマタのような、シカが忌避する植物が群落を作っている。
黒岳の山頂でゆっくりしていたら、4人の登山者が登ってきた。
高齢男性一人と高齢女性二人のグループと、高齢男性の単独行者である。
儂も高齢男性の単独行者だから、高齢者ばかりが5人、山頂に集結した形である。
東富士演習場で機関砲の射撃訓練が始まったようで、うるさくなってきた。
ドドドドン、ダダダダン、という感じでけっこう気に障る。
サファリパークからは音楽も聞こえてくる。
このあたりは人の生活圏から近い山の欠点かも。
4人の登山者に続いて、13時半頃、山頂を発った。
黒岳展望台までの稜線の林を、モノポッドにカメラを付けたままのんびり歩き、HDR 機能を試してみたりした。
14時、富士見峠まで戻る。
ここから越前岳方面へ少し歩き、鋸岳展望台まで行こうかとも考えたのだが、足を持ち上げるのが少々辛くなってきたので、下山することにした。
越前岳方面への登山は、また次の機会としよう。
15時、山神社駐車場着。
この程度(標高差500m未満、歩行時間3時間程度)の「軽い山歩き」は体に無理がかからず、気分転換に適切かもなぁ。