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2013/12/19

現場思考

表題は現場志向の変換ミスではない。
ワシは科学者としてもエンジニアとしてもライターとしてもアマチュアだが、とにかく「現場で考える」ことを重視したいと思っている。

空想を玩ぶのも好きだが、モノをいじったり汗をかいたり感じたりするほうが好きである。
……なんかヘンに誤解されるとイヤなので急いで付け加えると、工具や庭仕事の道具をいじったり、汗をかいて山に登って風や寒さや夜空の広がりを感じるのが好きなのである。

そして、その現場(フィールド)でアレコレ考える。
あとから思い返したり検証したりすると、しょうもない思い付きに過ぎないことも多いが、時折、現場に居なければ見えない/感じない/思い付かないんじゃないかと思えることもある。

というわけで、ワシは現場思考を大切にしている。
今はスマートフォンやTwitterやEvernoteがあるので、現場で気付いたことをすぐにメモできて便利だ。
紙の手帳と銀塩カメラしかないころは、思い付いたことを覚ておくのは大変だった。
もっとも、その頃は今より記憶力が良かったけどね。

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さて先日、足尾の無名のピークでカモシカを探しているとき、双眼鏡の視野に入る山肌が妙に気になった。
全体に黒っぽい玄武岩からできているのだが、ところどころ白い花崗岩が覗いている。

足尾は銅山の製錬所から排出された二酸化イオウのために、広範囲に森が失われ、表土が流失した。
むき出しになった岩肌はもろく、今も崩壊している。

植林して森を取り戻すための闘いは続けられているものの、崩壊が止まらず、低くなった稜線にも、白い花崗岩の岩体が現れている。
よく見ると、稜線の岩体から斜面の白い岩の筋まで、層のようになって、玄武岩の間に挟まっている。

貫入岩体か。
おそらく海底火山に由来する玄武岩の層が海底の地下深くにあったとき、裂け目にマグマが侵入し、ゆっくり冷えて筋状の花崗岩となったのだろう。
その後、プレート運動によって海底は陸地になり、さらに山となって、風雨に浸食されて岩肌をさらすようになったのだと考えた。

現場思考の弱いところは、すぐに裏付けをとれないところだ。
その後調べてみて、足尾山地は数億年前の火山岩と堆積岩からできていることを確認した。

数億年前の古い岩石からできているからといって、そこが長期間安定した土地だというわけではない。
海底から山へと変化し、しかも圧力を受けてグズグズになっている。
崩壊や落石で、何度怖い思いをしたことか。

そうした変化は、1970年代以前の教科書には、きわめてゆっくり、数億年単位で起こると書かれていた。
しかし最近の地質学の本を読むと、きわめて短期間、数十万年とか数万年とかいった単位で起こるようだ。

そして言うまでもなく、火山による大地の変貌は急速で容赦がない。
足尾の無名の山頂から富士山を認めたとき、周囲の山並みに阻まれて見えない浅間山や男体山のことを考えた。
今は(比較的)おとなしくしているこれらの火山も、いつ活動し始めるかわからない。
かつて「休火山」という分類があったことを、どれくらい覚えているだろうか。
もちろん、忘れたほうが良い。

ついでに、13万年間動いていなければ活断層ではない、という言い分も忘れたほうが良いだろう。

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