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2010/09/29

「ガラパゴス」と進化

シャープが12月発売開始予定の携帯読書端末および、その端末対応のサービスを発表した。
その名は「GALAPAGOS」。
若き日のダーウィンが調査のため赴き、後に進化論のヒントとなったガラパゴス諸島に由来する。

ガラパゴス諸島には、近隣の島とは形態の異なるガラパゴスゾウガメ、飛べないガラパゴスコバネウミウ、海藻を潜って食べるガラパゴスウミイグアナなど独自に進化した動物がいる。
とくに変化が著しいのはスズメに似たガラパゴスフィンチ(ダーウィンフィンチ)で、昆虫をつまむもの、穀類を食べるもの、木の実の種を割るものなど、様々な食性に応じたくちばしを持つ亜種に分かれている。
中には、大型動物(ウシなど)の血を吸うものすらいる。
その進化は、いまも続いている(ジョナサン・ワイナー著、樋口広芳・黒沢令子訳『フィンチの嘴(くちばし)ガラパゴスで起きている種の変貌』(ハヤカワ文庫)参照)。

ネットの業界で「ガラパゴス」というと、独自に進化して世界標準と離れてしまった日本のケータイ(携帯電話)を指すなど、ネガティブなイメージである。
これは、飛べないウミウや、絶滅しかけているゾウガメなど、独自に進化したことで新しい捕食者の登場や急激な環境の変化に対応できないことに由来するのだろう。

考えてみると、マスコミや広告業界では「進化」を常に「進歩」「発展」「成長」と混同して用いているから、「ガラパゴス」だけがネガティブなのは変なのだ。
もちろん、これは「進化」を「進歩」のように使うのが間違いなのである。

ガラパゴス諸島の動物たちは、海で隔離された島という環境では「最適」な状態に進化した。
ある環境に最適な状態に進化した生物は、その環境が変化したとき、新たな環境に対応できずに死滅するおそれがあるのだ。

例えば、ガラパゴスウミウやヤンバルクイナのような飛べない鳥は、捕食者のいない環境で進化してきた。
飛ぶための大きな翼や筋肉を必要としないので、その分、栄養分やエネルギーを節約したり、他の用途(卵とか脳とか)に転用したりできる。
つまり「飛べない」ことは、鳥たちにとって有益なことだったのだ。
イヌやマングースのような捕食者が現れるまでは。

生物学的な「進化」には、良いも悪いもない。
生物は世代を経るごとに変化し、環境により適したものが生き残る。
それだけだ。

さて、自ら世代交代して変化するわけではないが、道具も進化する
もちろん、生物の進化と同様、常に「発達」「進歩」するわけではない。
単純な構造でも環境に適していれば、変化せずに生き残る(金槌とかねじ回しとか……)。
一方、複雑な構造に進化しても、絶滅してしまう道具もある(ゲームウォッチとかワープロ専用機とか……)。
進化は複雑化する方向へ向かうだけではない。
ケータイは、カメラもインターネット接続もない「かんたん」なものへも進化している

さて、携帯読書端末はどのように進化していくのだろう?

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