麻酔の科学
『日経サイエンス2007年10号』の「麻酔の科学 脳に働くメカニズム」(B. A. オーサー)を読んだ。
麻酔は、医学ミステリや医学サスペンスで重要な役割を果たすことが多い。
例えば……って例を挙げただけでネタバレになりそうなので、例示できないくらいだ。
しかし、麻酔薬はその作用メカニズムは解明されていないのだそうだ。
この論文では、ニューロンの興奮を抑止する神経伝達物質 GAVA の受容体に一部の麻酔薬が作用することが明らかにされている。
しかも、神経伝達物質受容体、つまり細胞膜表面のタンパク質に作用するメカニズムを明らかにし、特定の作用をもつ麻酔薬を開発できれば、意識を保ったまま全身麻酔ができたり、手術中の記憶を抹消できたりするという。
ここでびっくりしたのは、まず、麻酔にはいくつかの側面(要素)がある、ということだ。
その要素とは、沈静、意識の消失(催眠)、痛みの消失(痛覚消失)、記憶の消失である。
これらの要素のうち特定のものだけを有効にしたり、無効にしたりできる可能性があるらしい。
われわれの精神と身体の働きが、いくつかの要素に分割でき、それらを個別にオン・オフできるということにも、またびっくりした。
他人と会話し、思考や判断を行なっているにもかかわらず、記憶がない、ということがあるのは、そのためなのか、とちょっと納得した。
えーっ、ワタシにはそんな経験ないよ、という人は、よく思い出して欲しい。
眠る直前に家族と交わした会話を全部思い出せますか?
起きぬけの会話は?
「今日の朝ご飯は何にしようか」といった会話をしたのに、あとで思い出そうとしても、まったく記憶にない、なんてこと、ないですか?
ワシはよく寝言を言うそうで、ワシの寝言に対してカミさんが質問をすると、しっかり答えるそうである。
もちろん、ワシには記憶はない。
もっとすごいのはワシのムスメどもで、互いに寝言で会話していることがあるのだ。
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