« 2023年10月 | トップページ | 2023年12月 »

2023/11/30

こん、昼寝の夢に登場する

Pb2705822

モミジバフウ(紅葉葉楓、アメリカフウ)の紅葉。
緑の葉が黄色くなり、赤みがまして、やがて黒いくらいの紫色になる。
クロロフィル(緑色)が分解されて元からあったカロチノイド(黄色)が目立つようになり、枝から絶縁される(離層が形成される)と葉の中で糖分がアントシアン(紫色)に変化する……という紅葉のメカニズムがよくわかる。カロチノイドとアントシアンの割合によって、黄色から赤色、紫色と変化していく。

この写真は月曜日に撮ったものだが、昨日今日と強い風が吹いたので、あらかた散ってしまった。

先週の水曜日(22日)から外壁塗装が始まり庭仕事ができないので、家事と散歩のほかは読書と昼寝で過ごす毎日。

昨日は遂に、こんが昼寝の夢に出てきた。

こんが散歩から帰ってきたので玄関で迎えるのだが、雨が降ったらしく体が濡れている。
濡れた体のまま飛び付いてくるので儂の服が濡れてしまう。
なんで暫く振りに会ったかのように、やたらと甘えてくるのだろうと思って気付いた。
こんが死んでから1年半経つのだった。

ということで気付いたところで目が覚めたのだが、一つ疑問が残った。
雨の中、こんと散歩に行っていたのは誰なのだろう?

| | コメント (0)

2023/11/27

宇宙からの視点

11月19日、富士山が雪をかぶっていたので写真に撮った。

Pb190569

場所は例によって門池公園である。

Pb190568

快晴無風の池の水面にイチョウの黄葉が映えていた。

Pb1905742

翌日の11月20日もよく晴れたので、夕方に散歩し、同じような景色を見た。写真は撮っていないが。

さて、NASA の Gateway to Astronaut Photography of Earth というサイトに、11月20日7時7分に ISS(国際宇宙ステーション)から撮影した写真が載っていた。

Iss070e27849
Image courtesy of the Earth Science and Remote Sensing Unit, NASA Johnson Space Center

解像度の高い写真は下記でご覧いただきたい。

https://eol.jsc.nasa.gov/SearchPhotos/photo.pl?mission=ISS070&roll=E&frame=27849

GMT の7時7分は日本時間で16時7分だから、儂がちょうど門池公園を散歩していたときに、上空を ISS が通過し、宇宙飛行士が写真を撮っていたわけである。

雪を戴く富士山と、その周りの山々がよくわかる。
富士山の影が右上(東北東)方向に長く伸びている。

江戸時代に噴火した宝永火口や、有史以前に噴火した愛鷹山の火口がはっきり見える。
箱根のカルデラが驚くほど大きいこともわかる。なにしろ横浜まで到達するほどの火砕流を起こした巨大火山だからね……。

Iss070e27849_m

人類は宇宙からの視点を得て、広く見渡すことや、新たな観点で自然を理解することができるようになった。
なったはずなのだが、なぜいまだに領土を奪い合って戦争なんてことをやっているのか、とても不思議である。

| | コメント (0)

2023/11/21

生物学と物理学の埋まらない溝

Dsc_2230

唐突に2020年4月(COVID-19パンデミックの始まりのころ)の写真を載せた。
こんを連れて沼津千本浜公園に言ったときのものである。
ここでの主題は、こんではない。

千本浜公園には、その名の通りたくさんの松が植えられて、防風林になっている。
そのアカマツの樹皮に注目する。

Dsc_22312

樹皮の模様は、幹が太くなるときに裂けた表皮がコルク化したものである。
裂け目をよく見ると、縦に長い六角形や方形のように見える。
方向性と周期性があるので、何らかの物理的法則があるのだろうと思われる。

このような樹皮の模様は、アカマツだけでなくクヌギやコナラなどでも見られる。
サクラやシラカバの樹皮は、横方向(水平方向)に裂けている。
一方、プラタナスやサルスベリのように、古い樹皮が剥がれ落ちて新しいすべすべの樹皮ができ続けるので、裂け目ができないものもある。

植物は、単なる物理的最適解を採用しているわけではないのだ。
生物の形態や生態には、必ず進化、つまり現在に至るまでの「歴史」が関係している。

3年半前の写真を持ち出したのは、『キリンの斑論争と寺田寅彦(岩波科学ライブラリー)』を読んで、その中に掲載されていたメロンの縞模様の写真を見たとき、樹皮にも似たような模様があったなぁと思い出したからだ。

以下、Amazon の『キリンの斑論争と寺田寅彦 』のリード文を引用する。

キリンの斑模様は何かの割れ目と考えることができるのではないか.そんな論説を物理学者が雑誌『科学』に寄稿したことに生物学者が危険な発想と反論したことから始まった有名な論争の顛末は? 現在の科学から論争の意味と意義を評価する.主導的な役割を果たした寺田寅彦の科学者としての視点の斬新さ・先駆性が浮かび上がる.

なぜか、生物学者と物理学者は仲が悪い。
生物学者は「物理学者は生物学的現象を単純に考えすぎる、生物はもっと複雑で能動的なものだ」と言い、物理学者は「生物学者は複雑な現象を複雑なまま扱おうとして失敗し、生命の神秘に逃げようとする」と言う。

そういえば儂も若いころ、物理学出身の人に「生物学は複雑すぎて嫌。だいたい、生物は種類が多すぎるし、相互の関係が入り込みすぎてる」と言われたこともある。
生物学徒としては、多様性と関係性が面白いんだけどね。

また、塾の夏期講習で教えているとき、同僚の物理学修士に「僕はビッグバンから1秒後より後のできごとには興味ないんですよ」と言われた。
いやぁ、生物はその、興味ないところに全歴史があるのですが。

まぁこの人は、「理科で摩擦力とか表面張力とか遠心力とか抗力とか、いろいろな力を持ち出すのはいかがなものか。自然界の力は強い力、弱い力、電磁力、重力の四つしかないのに」と面白いことを言っていたが。
まぁどんな力も還元すれば四つの力のどれかだけど、強い力と弱い力は原子核レベルでしか働かない核力だから、普段(マクロなスケールで)見かける力は電磁力か重力のどちらかになってしまう。
突き詰めれば電磁力になってしまうとはいえ、やっぱり摩擦力と表面張力とファンデルワールス力は区別したいよねぇ。
ハエとかナメクジとかヤモリが垂直な壁を歩くときのことを考えるときなんかに……。

ということで、若いころには生物学と物理学の間には、埋めがたいギャップがあるのかもなぁと思ったものである、

しかし現在(というか1980年代以降?)単純な物理法則と生物の生理生態とのギャップを、複雑系の科学、カオス学が埋められるのではないかと期待されている。
キリンやヒョウの毛皮や、サバの背中のような模様については、チューリング理論により説明できそうである。
ちなみにチューリング理論のチューリングは、チューリングマシンやチューリングテストを考案し、エニグマの暗号を解読した、あのチューリングである(ベネディクト・カンバーバッチがチューリングを演じた映画『イミテーション・ゲーム』は必見である)。

寺田寅彦の随筆を読むと、自然界に見られる縞模様や金平糖の角の配置、市電の混み方と運行遅延など、カオス学を先取りしたような論考が見られる(青空文庫で読むことができる)。
寺田寅彦が複雑系やコンピュータシミュレーションを知っていたら、面白い研究をしただろうに、と思う。

以前、動物の縄張りの分布の解析などに使われるボロノイ分割と、溶岩が固まってできた柱状節理や木々の枝の張り方が似ているなぁと思って「ボロノイ分割、柱状節理、林冠のすき間」という記事を書いたことがある。
儂のような科学のシロウトとしては、寺田寅彦のような鋭い観察・考察はできないまでも、身の回りの不思議なことに気づくだけの感性を持ち続けたいと思うのだ。

| | コメント (0)

2023/11/18

毒!

愛鷹山に登ったとき、山頂直下のブナ林の中で、美味しそうなキノコを見つけた。

Img_20231101_134755

ヌメリスギタケだと思うが、オオワライタケなどの毒キノコも似たような外見をしているので、採らなかった。
そもそも、静岡県では野生のキノコは採取禁止である(山伏峠のツキヨタケの話にも書いたなぁ)。

これまでにアイタケやチチタケ、ホコリタケのように間違えようのないキノコは、山で採って食べたことがある。
しかし、多くの食用のキノコは、毒キノコとの区別が難しい。
素人判断は危険である。

キノコというものは菌類の胞子体だから、胞子を放出する前に虫や獣に食われてしまっては、繁殖することができない。
そこで毒物を生成することで、食われることを防いでいるのだろう。

毒物が体内に入ったことを検知すると、嘔吐や下痢によって早く排出しようとするスイッチが入る。
車酔いやめまい、過度なストレスによって吐き気を催すのは、自律神経の乱れを「毒物を摂取した」と脳が勘違いし、毒物排出機能のスイッチが入るかららしい(ナゾロジー https://nazology.net/archives/137114 )。

国会の審議を経ずに何でも勝手に決めてしまう政府や、不条理な侵略を行う国家に対して吐き気を催すのも、毒物に対する拒否感によるもの……なのだろうか。

それはさておき、キノコの毒による身体症状は、嘔吐や下痢の他に呼吸困難などさまざまだ。
一番すごいのがカエンタケで、触っただけで皮膚炎になるという。

Img_20231101_095836

秋の山では、キノコだけでなく、草や木の果実にも有毒のものがあるので注意が必要だ。
林道の脇のマムシグサ(サトイモ科テンナンショウ属)が、赤い果実をつけていた。

Pb010527

いかにも食べられそうな外見だが、有毒である。
ちなみに「マムシ」という名前の由来は有毒だからではなく、茎のように見える部分にマムシのような模様があるからだ。

4月13日に愛鷹山の林道を歩いたときには、特徴的な花が咲いていた。

P4130144

じつは先週から舌の裏側にできた口内炎に苦しめられている。
そこで持病(高脂血症)の診察の際に漢方薬を処方してもらった。
「半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)」という名前を見て、半夏って聞いたことあるなぁと思って調べたところ、カラスビシャクだった。
サトイモ科ハンゲ属の植物で、畑の雑草として生えてくることもある。
カラスビシャクの塊茎も有毒だが、毒抜きをして有用成分だけを残して生薬として用いている。

毒は薬にもなる、というわけではなく、毒草はさまざまな化合物を作るので、その中には薬として使えるものもある、と考えたほうがよいだろう。

| | コメント (0)

2023/11/02

愛鷹連峰愛鷹山に登る

昨日(11月1日)午前9時半に家を出て、水神社に車を駐め、愛鷹山まで往復してきた(16時半に帰着)。

水神社に車を留めて林道を歩くのは今年三回目で、一回目は山桜を見て歩いたとき(4月13日)、二回目は位牌岳の手前まで登ったとき(5月10日)である。
次の写真は位牌岳方面への登り口に当たる「つるべ落としの滝ハイキングコース入口」で、このあたりはあまり紅葉していないように見える。

Pb010519

ちなみに、各地でクマが出没して被害が出ているため、愛鷹山に紅葉を見に行くと言ったらカミさんにだいぶ心配された。
そこでザックに熊鈴をぶら下げ、シェラカップがポットに当たるようにして、チリンチリン、カンカンと音を立てて歩いた。

林道の整備工事中で林野庁の作業者が入っていたり、有害鳥獣駆除(シカ)を行っていたりして、その警告の看板を見たが、「熊出没注意」はなかった。
代わりに「カエンタケ注意」の表示が林道のゲートに掛かっていた。

林道沿いにはリンドウやセキヤノアキチョウジ、ノジギク、マツカゼソウ(次の写真)などが咲いていた。

Pb010522

マツカゼソウはミカン科としては珍しい草本で、たおやかだがしたたかな感じがして好きなのだ。
林床で、陽の当たるところに咲いている。

Pb010524 

林道の脇のマツカゼソウを撮っていたら、上から小石が降ってきた。
「なんだ?」と声を上げたら、崖の上でシカが「ピャッ」と鳴いた。

ちなみに別のところでもう一回シカに石を落とされた。
クマに遭遇し被害を受けることはなかったが、シカに遭遇し被害を受けかけたわけである。

Pb010526

林道を歩いていくと、次第に紅葉・黄葉が増えてくる。

Pb010528

5月にヒーヒー言いながら下った、位牌岳から池の平展望台に至る尾根の斜面も色付いていた。

一服峠への登り口(ここへは4月に下見に来た)を過ぎ、柳沢橋の手前から伐開地を登る。
よく晴れて暑いので、ウインドブレーカーを脱いでTシャツになる。

Img_20231101_110049

伐開地の防鹿柵沿いの広い道を登り、振り返ると箱根の山並みを望むことができる。
箱根の手前の町並みは三島市と長泉町のあたりだろう。

Img_20231101_111531

この伐開地を抜けて行く道は、安山岩の板状節理の平たい石だらけで、半ば石畳のようになっている。
この石は林道沿いにもいっぱいあって、林道脇の大きな板状節理の露頭から剥がれ落ちたものだった。

この伐開地の石も、一部は板状節理の露頭から剥がれたものだろうが、大半は土(火山灰に由来するもの)に埋まっていたもののようだ。

Img_20231101_150538

なぜ板状節理に由来する石が、火山灰の中に埋まっているのか?

おそらく、このあたりは火砕流か山体崩壊に伴う土石流の跡なのだろう。
もっと高いところにあった板状節理(つまり冷えたマグマだまりか火道)が、噴火か山体崩壊によって崩れて火山灰とごちゃまぜになったのだ。

なんというか、こういうぐちゃぐちゃな地質から成る日本列島で、原発を稼働させたり核のゴミを埋めたりするのは間違っていると思うぞ。

標高1000mを超えるあたりまで、ヒノキ林と、ヒノキ林に挟まれた雑木林の中を行く。
道は枯れ沢をトラバースしたり、ヒノキの根っこを踏んで歩いたり、火山灰の赤土でずるずる滑ったり。

高齢者にとっては楽な道ではない。
それなのに、同年輩と思しき登山者二人にあった。
一人はトレールランニングのようだったし、もう一人はトレッキングポールも使わずに赤土の斜面を降りてきた。

うーむ、負けてられないなぁ、と一踏ん張りして稜線の鞍部に登る。

Pb010539

風が吹き抜けて涼しいが、少しシカ臭い。
この鞍部の草原はシカがササやスゲを食べることで維持しているようで、あちこちに踊り場(休息場所)やヌタ場(泥浴びをするところ)があった。

Img_20231101_134802

ブナ林とササの組み合わせは丹沢と似ているが、ブナ林にヒメシャラの大木がけっこう混ざっているところがちょっと違う。
上の写真の大木の左側がブナ、右側がヒメシャラで、どちらも葉を散らせている。
ちなみにヒメシャラは伊豆半島に多く見られる。

Img_20231101_123228

南側は愛鷹山本体で塞がれているので沼津市方面は見えないが、西側の富士市や駿河湾が望めた。
南アルプスも見えるはずだが、雲の中でよくわからなかった。

Img_20231101_124750

鞍部から愛鷹山山頂まで10分の急登だが、途中から富士山が見えるようになる。

富士山の右側には位牌岳、富士山の右下に越前岳も見える。

Pb010549

12時50分、愛鷹山山頂(1188m)に到着。
山頂からも北側の展望があり富士山が望めたが、東側・南側・西側の展望はない。

Img_20231101_130316

ウクライナのクラッカーとペンシルカルバス、チーズかまぼこの昼食。
たったひとり、富士山を眺めながらの贅沢で簡素な昼食。
ちなみに飲み物はポットの中の氷水(沼津の水道水だから水源が柿田川なので、富士山の水)。

山頂の狭い草地には、キタテハが舞い、ハナアブが右往左往していた。
ズボンにダニが付いていたので、指で弾いて飛ばした。

食べながら下山ルートを検討する。
南へ下ることも考えたが、林道を延々と歩くのも辛そうなので、来た道を戻ることにした。
来た道もけっこう辛かったが。

Img_20231101_133650

山頂から鞍部へ下ってしまえば、遮るもののない景色も見納めである。
位牌岳から池の平展望台に至る稜線を見ていたら、遠くに見覚えのある山並みが。

若い頃に毎月のように通っていた丹沢である。
もう30年以上前……いや、40年も前になるのか。
たかだか5〜6時間の山行でヘトヘト、ガタガタになるのも当たり前か。

愛鷹山から位牌岳への稜線も歩いてみたいと思っていたが、考え直したほうが良いかもなぁ。

 

 

| | コメント (0)

« 2023年10月 | トップページ | 2023年12月 »