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2023/07/16

空蝉および蝉の恩返し

昨日の記事(蝉の恩返し、または空蝉)を書いた後、真夜中が迫る頃に庭に出て、助けたクマゼミの幼虫がどうなっているか調べた。

Img_20230715_233813

まったく何ということか。昨日の記事に書いた三匹分の抜け殻(空蝉)にさらにぶら下がって羽化していた。

厳密に言うとこの写真の個体が儂の助けた個体だという確証はない。たまたま同時に羽化した別個体かもしれない。藪蚊に襲われて充分な確認ができなかったからだ。

今朝になって確認すると、成虫になったクマゼミはすでに去り、ユスラウメには少なくとも三匹分の空蝉が追加されていた。そのうち二匹は普通に枝や葉の先で単独で羽化していたが、残る一匹、昨晩羽化を見たやつは三つ巴にぶらさがって、風に揺れていた。

P7160310

三つ巴状態の空蝉の下に、器用にぶら下がっている。角度を変えて撮ったのが次の写真。背景はコンポスト容器。

P7160311

なんでこの枝先だけ、こんな団子状態になったのかはわからないが、クマゼミの空蝉というやつは羽化の足場としては極めて優秀なようだ。

ひょっとして、クマゼミは空蝉が足場として機能する方向に進化していくのだろうか、などと妄想する。空蝉を足場にできれば、木の枝などが少なくて足場の確保が難しい環境でも安全に羽化できるからだ。

さて、助けたクマゼミが恩返ししてくれているのかどうだか、幸いにしてウチの庭では、まだクマゼミは鳴いていない。しかし、蝉に恩返しを期待するのは無理かもしれない(冗談やファンタジーとしても成立しないのでは、ということである)。

というのは、昆虫の脳神経は幼虫から成虫への変態の際に再構成されるという話を読んだことがあるからだ。儂に助けられたという記憶が幼虫にあったとしても、成虫になるときに脳神経が組み立て直されるとしたら、忘れ去ってしまうだろう。

いやちょっと待て。幼虫の脳神経を溶かしてタンパク質と脂質のスープに戻し、成虫の脳神経に組み上げる作業は、蛹の時期に行われる。すると脳神経の再構成は蝶や蜂、甲虫などの完全変態する昆虫の場合に限られるのではないか? 蝉や飛蝗や蜻蛉のように蛹の時期がなく、幼虫と成虫の姿に大きな変化がない(不完全変態の)昆虫の場合はどうなのだろう?

と思ってちょっと調べて、「原始的な昆虫の脳の発達メカニズムの研究から昆虫神経系の進化を解き明かす」(総合研究大学院大学・渡邊崇之助教)というPDFの記事を見つけた。その中に次の記述があった。

蛹期を持たない不完全変態昆虫では大規模な神経系の構造的改変は起こりませんが、成虫は幼虫期には見せなかった配偶行動などの新たな行動を示すようになります。この行動獲得には、神経回路の構造的・機能的再編成が必要と考えられますが、それがいつ、どの程度の規模で、どのような分子・細胞メカニズムにより引き起こされるのかは全く明らかになっていません。

うーむ、蝉の場合、神経系の大規模な再構成はないようだが、幼虫時代の地味な地中生活から、地上で飛び回り鳴き騒いで伴侶を探すという成虫時代へと、生活環境も行動様式も劇的に変化する。だから当然、脳神経も変化して当然のような気がするが……。

冗談やファンタジーとして「蝉の恩返し」が成立するかどうか、今後の研究を待ちたい。

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