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2021/11/14

「科学的」は科学的なのか?

ニコチンは毒である。

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ニコチンの構造式(出典:Wikipedia)

そりゃそうだ。ナス科の植物は、虫に食われるのを防ぐために、神経毒であるニコチンを生成するように進化し、そのニコチンをヒトは精神安定剤代わりに使ってきた。

いや、この言い方は正しくない。

ニコチンを生成するように変異した植物は、虫に食われにくいので生き残った。

このように目的論を排し、結果論的に考えるの「進化」の正しい解釈である。

それはさておき、ニコチンは神経毒で、昆虫には少量で作用するので、殺虫剤に使える。ヒトにも経口投与では数mgで致死的に作用するので、タバコの吸い殻を漬け込んでおいたペットボトルの水は、殺虫剤に使えるが、飲んではいけない。

このようにニコチンは危険なので、ニコチンに似た殺虫剤として、ネオニコチノイド系農薬が開発された。

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ネオニコチノイド系農薬クロチアニジンの構造式(出典:Wikipedia)

ところが、このネオニコチノイド系の殺虫剤が、ミツバチの失踪事件(蜂群崩壊症候群)の原因ではないかと疑われ、フランス政府は使用禁止とした。

先週11月6日のTBSの番組「報道特集」では、宍道湖で魚が激減した要因として、ネオニコチノイド系農薬によりプランクトンが死滅したことが原因ではないかと報道していた。

魚やトンボだけでなく、ヒトにも影響があるのではないか……ということで、マウスを使った実験なども紹介されていて、なかなか衝撃的であった。

ネオニコチノイド系農薬にたいする規制に乗り出したEUに対し、日本はどうか。

番組の取材に対し、農林水産省の農薬対策課は、「提出された試験成績に基づき、科学的に安全が確保されている農薬だけを登録」しているので問題ないとしていた。

ここで気になったのは「科学的」だから「安全」だという論法が、はなはだ非科学的である、ということだ。

科学的方法論が有効なのは、誤り訂正機能を含むからである。

つまり、一度科学的に検証したから(安全であることが)決定される、というものではなく、科学的検証を繰り返して常に確認し続けなければ、安全とは言えないはずだ。

「提出された試験成績」というところも気に入らない。

人は嘘をつくことがあるし、そのつもりがなくても誤って虚偽の報告をすることがある。

だから、科学的な条件の一つが「再現性」であり、再現実験をして同じ結果が得られなければ、科学的とは言えない。「提出された試験成績」を鵜呑みにした時点で、すでに科学的ではない。

それだけではない。

試験(実験)結果というものは、ちょっとした設定条件の違いによって、大きく異なってしまう(科学的な実験をやったことがあれば、誰でも知っているはずのことだ)。

ここで思い出すのは水俣病の原因である有機水銀(メチル水銀)のことである。

チッソは工場廃液に含まれる水銀は無機水銀(硫酸水銀)なので、工場廃液と水俣病は無関係と主張したが、後に工場廃液に有機水銀が含まれることが判明し、水俣病の原因であることが確定した。
原因判明までの過程では、例によって御用学者が「工場廃液が原因ではない」と「科学的に」主張したりしている。

経済を優先し、環境保全や市民の健康・安全を軽視する「公害」は、過去の話ではないのだ。

疑わしきは禁止、という予防原則が日本において常識的となるのはいつの日だろうか。

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