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2015/09/21

『天空の蜂』とプルトニウム

防衛庁(省ではない)に納入直前の巨大無人ヘリが奪われ、稼働中の高速増殖炉の上空でホバリングし、犯人からの要求が電力会社や政府・役場に届く。
燃料が切れてヘリが墜落するまでに、日本中の原発を停止させ、稼働できないように破壊すること。

無線操縦で離陸し、プログラムにしたがって滞空し続ける世界最大のヘリには、試験飛行を見学に来ていた技術者の息子が(誤って)乗っていた。

上空千メートルのヘリからその子を救い出すことはできるのか。
技術者たちは巨大ヘリの墜落を防ぐことができるのか。
ヘリの墜落に備えて原発ではどんな対応ができるのか。
日本政府は要求に応えて原発を停止させるのか。
犯人は誰か、警察は犯人にたどり着けるのか。

そして、犯人の本当の目的は何か?

(以下、ネタバレ注意)

1995年の小説である。
講談社文庫版で読んだのだが、第1刷の発行は1998年11月。
先日(9月12日)の映画公開に合わせて書店の店頭に山積みになっていたので買ってみたら、2015年6月発行の第67刷だった。

20年前の小説なのに、現在も変わらぬ原発の問題点が盛り込まれている。

不安を口にできない原発立地の住人。
「麻薬」のように交付金漬けになってしまう自治体。
労災認定されない原発労働者の死。
線量を誤魔化さないと回らない原発の下請け労働者の環境。
嫌がらせを受ける反原発運動家。
原発こそがエネルギー危機を救うと信じて疑わない……疑うことを恐れる……原発技術者。
じつは高速増殖炉よりも危険かもしれない、使用済み核燃料。
ないと困るが、あることを歓迎されない、原発と自衛隊。

一方、20年の間に変わったこともある。

高速増殖原型炉「もんじゅ」でナトリウム漏れ事故が起こった(1995年12月)。以後、高速増殖炉の計画は事実上頓挫した。
防衛庁は防衛省になった(2007年)。
ニューヨークの貿易センタービルが、テロにより崩壊(2001年)。航空機によるテロの恐怖がより現実的になった。
阪神淡路大震災(1995年)、新潟県中越大震災(2004年)、東日本大震災(2011年)の災害支援を通じて、「戦わない軍隊」としての自衛隊の評価が高まった。
原発が「想定外」の災害に弱いことが露呈した(2011年)。

そして、『天空の蜂』で原発の問題点として挙げられていなかった、使用済み核燃料、核廃棄物の問題。

1995年には16トンだったプルトニウムは、2011年には44トンと、3倍近くに増えている。
使用済み核燃料や廃棄物にいたっては、いったい何万トンあるのやら。

犯人の一人(そして主人公の一人でもある)が望んでいたことは、日常使われている電気がどうやって作られているかに無関心な人びとに、原子力について考えさせること。

これは、2011年3月11日以後、日本のみならず世界中の誰もが、考えざるを得なくなった。
だが、人々の思いはどうあれ、政府は原発を諦めようとしない。
いったいなぜだろうか?

まさか、あの、プルトニウムを……

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