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2014/03/11

トリチウムは元素の名前ではない

ウチのカミさんは文系だが歴史学と考古学が専門なので、そこいらの理系よりよっぽど科学的である。
なんてふうに書くと、また設解を招きかねない表現だと指摘されるかも知れない。
科学的思考に文系も理系もないからね。

それはさておき、ー向に収束しない福島第一原子力発電所事故。
特に問題なのが、増え続ける汚染水である。

汚染水の海洋放出についての報道でトリチウムという名前がストロンチウムと並んで出てくる。
ここで、ふと思い付いてカミさんに訊いてみた。

「トリチウムってのは、ストロンチウムやセシウムなどと違って、元素名じゃないんだよ、知ってた?」

カミさんは、トリチウムが水素の同位体であることを知らなかった。
学んできた過程(課程)が違うし、興味のベクトルも違うので、これは仕方ない。
科学的思考ができるかどうかと、自然科学の知識の寡多とは関係がない。
そこを混同して、文系をバカにする理系が居るのは、大変遺憾である(「遺憾」の正しい使い方の例……「残念なヤツが居る」ってこと)。

それはさておき(2回目)、トリチウム。
元素としては水素なのだが、普通の水素(ヒドロジェン)の3倍も重いので、特別にトリチウムと呼ぶ。
日本語では「三重水素」という。

三重があるなら二重だってある。
「重水素」、ジューテリウムである。

元素の性質は(高校化学で習ったとおり)原子核内の陽子の数で決まる。
水素の原子核に含まれる陽子の数は、1個。
重水素も三重水素も、陽子の数は、1個。

じゃあなんで重さが2倍、3倍になるのか?
重水素(ジューテリウム)の原子核には、陽子1個のほかに中性子が1個含まれている。
三重水素(トリチウム)の原子核には、陽子1個のほかに中性子が2個含まれている。
中性子の重さは陽子の重さとほぼ同じなので、トリチウムの重さは水素の3倍なのだ。

ただ重いだけなら良いのだけれど、トリチウムは半減期約12年の放射性物質である。
ベータ線を放出してヘリウム(ヘリウム3)に変わる。
このベータ線は弱いので、外部被曝については深刻にならなくても良いようだ。

では、何が問題なのか?

トリチウムは、3倍重いけれども化学的性質は水素である。
そこで、1個のトリチウムと1個の普通の水素、1の酸素が結びつくと、ちょっと変わった水になる。
普通の水分子より1割ほど重い「重水」である。

多少の性質の違いはあるものの、地下水に混じって海に放出されたトリチウムを含む重水は、環境中ではほとんど水と同じように振舞う。
当然、トリチウムは動植物の体内に取り込まれる。
体内でベータ崩壊が起これば、至近距離の被曝、すなわち内部被曝となる。
また、体内に取り込まれた後に細胞を構成する分子の一部になったトリチウム(三重水素)が崩壊してヘリウムに変われば、その分子は機能を失う。
体内に取り込まれたトリチウムの量が少なければ、その影響はわずかだろう。
実際、トリチウムは宇宙線などによって、わずかではあるが自然に生成されている。
だが、トリチウムの量が異常に多ければ、どうなるだろう?

もう一つの問題は、トリチウムは環境中では重水として存在し、普通の水から分離することが困難であることだ。
原子炉の中やメルトダウンした核燃料から作られ続けるトリチウムは、どれほどの影響を環境と、その中で暮らす生き物に与えるのだろうか。
……ヒトもまたその生き物の一種に過ぎない、ということを忘れてはならない。

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