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2014/01/01

『原発ホワイトアウト』を読んだ

若杉冽著『原発ホワイトアウト』を読んだ。

ふつう、小説を読むときに期待するカタルシスは得られない。

ノンフィクションや、吉村昭の記録文学を読んだときのような重苦しいものが残る。
高村薫の『神の火』の読後感に近いものがある。

まぁ何とも胸くその悪い話ではある。
再稼働の理由は結局カネか?
そのカネの出どころは、ワシ(達)の払っている税金と電気料金なのだけどね。

あんまり胸くそが悪いもんだから、終章に至って「新崎原発」でメルトダウンが進行し始めると、
「だから言わんこっちゃない」
とか
「ざまぁみろ」
とか思いかけてしまう。

いやいやいや、メルトダウンしては困る。
「国益のため」と言いながら既得権益を守ることに腐心する官僚や電力会社幹部によって、この国土が汚染されることは許せない。

さて、以下ネタバレになる。

福島第一原子力発電所は、想定外の津波により全電源を喪失、メルトダウンに至った。
……と言われている(ひょっとすると、想定内の地震によって配管が破断したのかも知れないが、原子炉に近づけないので本当の原因はわからない)。

この物語の中で再稼働した「新崎原発」は、いかなる「想定外」の事態によってメルトダウンに至るのか……。

大晦日の夜、原子力発電所で発電した電気を送り出す送電線の鉄塔が(テロにより)倒壊する。
電力負荷をロスしたことにより、原子炉が緊急停止(スクラム)する。
原子炉が停止しても、核燃料は崩壊熱を放出し続けるから、冷却しなければならない。
しかし、爆弾低気圧による低温のため、非常用ディーゼル発電機が始動できない。
しかも、爆弾低気圧による吹雪のため、非常用電源車の車庫までたどり着けない。
原子力発電所周囲の道路も凍結し、しかも年末年始休暇のため除雪が追いつかない。
周辺住民がてんでに避難を始めたため(例によって避難計画はおざなりだった)、交通網は麻痺。
そのため、原発は孤立し、原子炉冷却の手立てがない……。

……メルトダウンを起こすのに、地震も津波も必要ない、ということか。
……原子力発電所へのテロではなく、送電線へのテロ……現実には、想定し、対策が講じられているのかなぁ。

大晦日に『原発ホワイトアウト』を読んで暗~い気分になって寝て、元日の早朝は強風の音で目覚めた。
幸い、2014年の元旦は、どこの原発もメルトダウンすることなく明けた。

すべての原発が停止しているのだから、まぁ当然か。
もっとも、停止していても、使用済み核燃料がある。
素直に「おめでとう」と言う気分には、やっぱりなれんなぁ。

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