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2013/06/19

『理工系のための原子力の疑問62』を読んだ

関本博著『理工系のための原子力の疑問62』を読んだ。

30年以上前に放射線生物学を学び、以後『科学朝日』や高木仁三郎の本くらいでしか核化学、原子力工学の勉強していなかった。
福島第一原子力発電所のメルトダウン後、『日経サイエンス』を読んでいたら、新しいタイプの原子炉が考案されているといった記事があったので、これはイカンな、知識が時代遅れになっちゃうかも、と思って本書を買った。
基礎から最新の情報までコンパクトにまとまっているからと思ったのである。

たしかに、基礎から丁寧に、核化学や原子力工学を専門としない理系にわかりやすいようにまとめられている。

だがねぇ。
買うときからわかっていたことだが、著者は原子力発電は文明の維持・発展に不可欠と考えている。

「原子力のエネルギー密度は最高!」
「再生エネルギーなんて役不足!」

……要するに、原子力を愛しちゃっているのだね。

もちろん、人災を含めた災害対策の難しさや核廃棄物の問題、核ジャックなどのリスクについては充分承知していて、考慮すべき課題として挙げられている。

でも、「原子力は最高!」だから、何としても「安全な原子炉」開発が必要というわけである。

だけどねぇ。
いかなる原子炉であれ、災害への対応に完璧を期すのは難しいだろうし、核廃棄物は増え続ける。
地球環境において、というか地球の生態圏において、原子炉を稼動させるのは倫理的にどうかと思うよ、ワシは。

前にも書いたが、ワシは「核と人類は共存できない」とは考えていない。
放射線の吹き荒れる宇宙空間で原子力を利用することは否定しない。

ただ、青空の下で子供たちが虫を採ったり魚を釣ったり、沢の水を飲んだり木の実を食べたりできるような「ふるさと」を壊すようなことはせんでくれ、と言いたいだけである。

「マーフィーの法則」に言及するなら、「絶対に故障しない機械」についても考察して欲しかったかなぁ。

えーと、ちょっと話は変わるが……。
「フクイチの事故で死んだ人はいない」なんてことをまた言っちゃったとかいう話を新聞で読んだが、カネのために原子力発電所を再稼働させようというような人は、やっぱり倫理的にどうなんでしょうか。


(注)

マーフィーの法則(基本則):何かうまくいかなくなる可能性があるときは、必ずうまくいかなくなる。

絶対に故障しない機械:「故障の可能性があるものと、ぜったいに故障しないものとの大きな違いは、ぜったいに故障しないものが故障したときには、そばに近づくことも修理することもたいてい不可能だということです」
銀河ヒッチハイクガイドシリーズ『ほとんど無害』より、銀河文明においてあらゆる装置に付けられているという注意書き

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