« 出掛けない、こどもの日 | トップページ | 誰もいない地球 »

2013/05/07

もう一つの電子書籍の形

いつ本当にくるのか電子書籍元年、と思いながらも個人的には自炊して、古い、活字が小さく紙の傷んだ蔵書を電子化し続けている。
つい先日スキャンして PDF 化した文庫本の中に、ロジャー・ゼラズニイの『ロードマークス』があった。

いまはなきサンリオSF文庫。
ボブ・ショウの『去りにし日々、今ひとたびの幻』など、名作が含まれていたので、貴重かもなぁ、と思いつつ裁断してスキャンした。

それはともかく、『ロードマークス』には「草の葉」(リーヴス・オブ・グラス)と「悪の華」(フラワーズ・オブ・イーヴル)という人工知能が出てくる。
その名の通り、本の形に組み込まれたコンピュータなのだ。
本としての体裁は布張りの上製本だが、装丁のはがれたところから金属が覗いている。
ふつうの本なら表紙の台紙としてボール紙などが用いられているところに、金属製のコンピュータ本体が組み込まれているようだ。
ちなみに、この金属は銃弾を受けると歪むが貫通しない程度の強度を持っているらしい。

入力装置はマイクロホンで、音声で操作する。
ただし、高度な人工知能が搭載され自意識まで持っているため、勝手に電源をオンにしたり、操作する前に自己判断で処理を進めたりする。
マイクロホンのほか、各種のセンサーを搭載しているようで、周囲の光景や匂いも捉えるらしい(作中で、銃弾を受けたせいで火事の煙を関知するセンサーが壊れたという記述がある)。

出力装置としてはスピーカーしか備えていないのだろうか。
ただしこのスピーカー、超音波の発生も可能なので自衛用の武器としても使える。
ページの一部がディスプレイとして使用可能な仕様になっているのかもしれないが、リーヴスもフラワーズも会話するほうが楽しいせいか、作品中では何か表示するようなシーンはない。
外部出力というか、他の機器のコントロールもできるようで、自動車の運転もしていた。

ページの一部は光学読み取り用のセンサー(要するにスキャナ)になっているらしく、写真の人物を調べるために何ページと何ページの間に挿め、なんてリーヴスが指示するシーンがある。
ということは、表紙だけでなく、ページも(紙のように見えるが)電子デバイスなのだ。

「印刷され、製本された本」の体裁を持ちながら、移動機能を持たないロボットに相当するような「電子書籍」の姿がここにあった。
スレート型コンピュータの体裁で、文字は表示するだけの現在の「電子書籍」とはまったく異なる。
いまは亡きSF作家の想像上の「製品」が、こんなにも魅力的なのはなぜだろう?

|

« 出掛けない、こどもの日 | トップページ | 誰もいない地球 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: もう一つの電子書籍の形:

« 出掛けない、こどもの日 | トップページ | 誰もいない地球 »