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2013/05/08

誰もいない地球

SFの設定に、「誰もいない地球」というものがある。
もちろん、「誰も」というのは「人間が誰も」ということである。
まぁ、映画でいえば『アイ・アム・レジェンド』の冒頭、ウィル・スミス以外の人影が見えないニューヨークのような状況を思い浮かべれば良いだろうか(『アイ・アム・レジェンド』はその後まったく別の方向へ話が進むが)。
あるいは、アニメ映画『ウォーリー』の世界とか。

アラン・ワイズマンの『人類が消えた世界』(早川書房)では、原因が何であれ、人類が消え去った地球がその後どのように変わるかを考察している。
原因は何であれ……とはいうものの、気になる。
人類が環境に大きな影響を与えずに消え去ることなど、可能なのだろうか。

ヒトだけに有効なウイルスによって死に絶える……なんていう具合だと、死屍累々となって環境汚染も甚だしいことになりそうだ。
やっぱり、異星人にさらわれるとか、自ら地球から出ていくとか、そういう条件が必要だろう。
ジョン・ヴァーリイの『へびつかい座ホットライン』のように、異星人に追い出される、というケースもあったね。

よりシリアスなSF的状況としては、やはり人類が自ら地球を後にする必要がありそうだ。

では、なぜ人類は地球から離れなくてはならないのか。
大気汚染とか水質汚染とか放射能汚染とかによる環境破壊はNGである。
それはもう、アシモフが「銀河帝国」シリーズで書いている。
それに、環境を破壊してしまっては、残された地球上の他の生物に申し訳ない。
すべての生物が、『銀河ヒッチハイクガイド』のイルカのように地球から逃げ出すことができるわけではないのだから。

そんなことをアレコレと、連休中も考えながら食事の支度を手伝っていたら、カミさんが「ブロッコリーやナシでアレルギーが出るなんて、若い頃は思ってもいなかった」と言った。
そういえばワシも、キャベツを大量に食べると下痢をする。
ハウスダストやスギ・ヒノキの花粉のほか、イネ科植物の花粉もアレルゲンである。
いろいろなアレルゲンが年とともに増えるようで、朝晩の温度差で鼻が詰まったり頭が痛くなったりする。

まだワシなどは鼻水と頭痛くらいだから良いほうで、アナフェラキシー・ショックなど重篤なアレルギー症状を示す人もいる。
そのアレルゲンも、植物、動物、化学物質等々、多岐にわたる。
学校給食においても食物アレルギーに配慮しなければならないなど、本人も周囲の人々も苦労が耐えない。

……ということから、ふと思いついた。
ひょっとするとSFなんかではなく、近い将来、人類は地球環境のありとあらゆる物質に対するアレルギーのために地球から去ることを余儀なくされるのではなかろうか。

大気中には花粉や胞子、微小な動物の死骸や毛などの欠片、化石燃料を燃やして発生する微粒子(PM2.5など)、農薬などの化学物質等々、ありとあらゆるアレルゲンが存在する。
すべてのヒトが、それらにアレルギー反応を起こすようになってしまったら……。
もはや地球上で暮らすことはできず、すべてのアレルゲンをシャットアウトした軌道上や月面などでの人工環境で生活するしかなくなるだろう。

アレルギー症に悩む人が増えていく……という現象は現実的に進行しているような気がする。
しかし、いきなり全人類がアレルギー症になる……という状況はSF的なので、何か原因を考えなくてはなるまい。

それ自体は害を及ぼさないウイルスに感染したとき、特定の物質(例:一酸化炭素)を吸うと広範なアレルゲンに対するアレルギー反応が起きるようになるとか。
非病原性ウイルスによる水平伝播によって、ごく短期間に全人類がアレルギー症になる……なんてことはあっても不思議ではなさそうだ。

環境中のあらゆる物質がアレルゲンになってしまったのでは、人類は必死になって地球からの脱出を図らざるを得ない。
持てる技術のすべてを使って、軌道エレベーターを建造し、軌道コロニーや月面コロニーを建設するだろう。

とにかく、そうやって人類が消え去ったとする。
その後の地球で問題になるのは、原子力発電所だ。
原子炉は、スイッチを切れば止まる、というものではない。
安全に停止させ、停止状態を維持し、使用済み核燃料を保管し、核燃料や原子炉が(バックグラウンド程度に)放射能を失うまでの数十万年、見守る必要がある。

見守ろうにも、人類はいない。
では、だれが?
やはり、ロボットか……。

ウォーリーは人類の去った地球に残されたゴミ処理ロボットだったが、実際には原子力発電所と核廃棄物を管理するロボットが必要になるだろう。

誰もいない地球で、もはや発電に使われていない原子力発電所を巡回してメンテナンスするロボットの話。
……なんていう、もの寂しいSFができそうだ。

誰もいない地球は、緑にあふれ、鳥は歌い、花は風に揺れる。
この地球が放射性物質に汚染されることがないようにすること。
その命令をインプットされたロボットが地上のあちこちを巡るうち、地球の現状を観察しにきた人間に出会う。
月面で生まれ育ったその人は、低重力に適応し、環境中の物質に対してアレルギーを持つため、気密構造の外骨格スーツを着ているのだった。

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