« 科学とは、誤りを正しながら前進すること | トップページ | 地層処分に関するちょっとした疑問 »

2013/04/03

安定した地層って何のこと?

日経サイエンス2013年4月号の特集が「首都直下地震」だった。
大正関東大震災や安政江戸地震のような、首都直下で発生し大きな被害をもたらす地震が、いつ・どのように起こるかという話。
……結論は、近いうちかもしれない・起こるしくみがわかってきた、という具合。

首都直下地震の周期が、100年なのか200年なのか400年なのか、史料と地層を比較しても、まだ確実なことは言えないようだ。
だいたい、周期といったってカオスだから、周期性があることは確かなようだが、次がいつかは断定できなくてアタリマエだ。
サクラの開花には周期性があり、春になれば咲くことはわかっている。
だが、「いつ満開になるか」を予測することは難しい。

複合的な要因がからむ自然界は、実験室とは違うのだ。

さて、今回の特集を読んでいて、日頃から疑問だったことがいくつかスッキリした。

伊豆半島がフィリピン海プレートに乗っていて、本州に衝突し、今も押し続けていることは、よく知られている。
では、そのフィリピン海プレートの端は、どのように沈み込んでいるのか?

理科の教科書などで日本付近のプレートの断面図を見ると、大陸側のプレートの下に、海洋プレートが沈み込んでいく様子が描かれている。
大陸プレートは花崗岩質、海洋プレートは玄武岩質なので、より重い海洋プレートのほうが沈んでいくのだ。
関東地方にあてはめると、陸側のプレートは北アメリカプレート、海洋プレートは太平洋プレートである。

ちょっと待て。
伊豆半島の東側、相模湾の海底では、太平洋プレートとフィリピン海プレートが接しているはずだ。
海洋プレート同士の場合、どちらが沈み込むのだろう?

答えは、太平洋の底を長く旅してきて冷えきった太平洋プレートが、まだ火山を生むほどホットなフィリピン海プレートの下に沈み込む、というものだ。

そしてさらに、二つの海洋プレートは、大陸プレートの下に沈み込む。
……したがって、関東地方の地下では、大陸プレートと太平洋プレートの間に、フィリピン海プレートが潜り込む形になっている。

大地震は、プレート境界にたまった歪みが解放されるときに起こる。
海洋プレートが沈み込んでいくとき、摩擦によって大陸プレートも引きずられるが、これが反発して動くとき、地震となるのだ。

関東地方の地下にはプレート境界が二つあり、フィリピン海プレートと大陸プレートの境界は浅い。
そこで、太平洋プレートと大陸プレートの境界で発生するM7クラスの地震よりも、フィリピン海プレートと大陸プレートの境界で発生するM7クラスの地震のほうが、地上の震度は大きくなる。

関東地方の直下型地震の被害想定が見直されたのは、この知見によるものだったのだ。
なるほど。

日頃の疑問のもう一つは、プレート境界と活断層がどのように関連しているのか、ということだ。

プレート境界で大陸プレートが反発せず、プレートにひびが入ることがある。
そのひびが、プレートの上の地層にも現れることがある。
例として挙げられていた神縄・国府津−松田断層帯が、相模トラフから延びる大断層の、「地上に現れた部分」に過ぎないことを示す図は衝撃的である。

地下の巨大な構造の、ほんの一部の小さな動きを見て、「ここは安全」「ここは危険」なんていう区分に意味があるのだろうか、と考えてしまった。

プレート境界に盛り上がり、海の上にちょこっと顔を出した海底堆積物+火山列にすぎない日本列島に住む以上、およそ「安全」と平和ボケしていられる場所などないのだなぁ、と思った。

自家製の防災マニュアルを作っておくかなぁ。

【追記】
2013年4月3日に「不動の大地って何のこと」というタイトルで公開したが、4月6日に「安定した地層って何のこと」に変更した。
「安定した地層」に放射性廃棄物を埋設処分する、なんていうファンタジーにひっかけたのだ。
1950年代の地質学では「安定した地層」という幻想も抱けたかも知れないが、1970年代のプレートテクトニクス、1990年代のプルームテクトニクス以後、「安定した地層」なんてものは存在しないと考えられている。

|

« 科学とは、誤りを正しながら前進すること | トップページ | 地層処分に関するちょっとした疑問 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 安定した地層って何のこと?:

« 科学とは、誤りを正しながら前進すること | トップページ | 地層処分に関するちょっとした疑問 »