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2012/02/12

生物の力

福島第一原子力発電所の汚染水を処理施設に運ぶ配管に穴が開き、汚染水が敷地内に漏れるという事故があった。
その穴は、草が開けたのだそうだ。
チガヤという土手などにふつうに見られる草である。
若い花穂をツバナと呼び、食べることができる。
初夏に銀色の穂をつけるので、その時期だけ目立つ、地味な草である。

夏の間に伸びる芽の先でプラスチックの配管を突き破って穴を開けたが、草が穴をふさいでいた。
秋になって草が枯れ、穴があらわになって汚染水が漏れたのだそうだ。

そういえばチガヤなどのイネ科の植物は、よくアスファルトを突き破って舗道をデコボコにしてしまう。
生物の細胞の静水力学的なパワー(要するに圧力)を甘く見てはいけない。
おまけにイネ科植物の細胞壁はケイ酸(シリカ)の結晶で強化されている。
これで静かに、ゆっくり、ゴリゴリとやられたら、プラスチック類は耐え切れまい。

もちろん、イネ科植物は配管に穴を開けるべく進化してきたのではない。
葉の縁(へり)や葉脈の上に並ぶ
鋸(のこぎり)状のシリカの「刃」は、草食動物に対抗して進化してきたものだ。
棘(とげ)や毒と同様、草食動物を傷付け、げんなりさせて食べられないようにする戦略である。

もっとも、草食動物も食わなくてはならないので、丈夫な口や解毒酵素を持つように進化している(ヒトだって、多少の毒には耐性がある。イヌがタマネギを食べると死ぬって知ってるかな?)。

生物の進化は、生物のしたたかさを、侮れない力強さを物語る。

せっかく設置した配管に穴を開けられてしまった技術者の皆さんは気の毒だが、生物の力を侮っていた、ということはないだろうか。

というのは、物理化学系の人は、生物を軽んじる傾向にあるんじゃないか、と思うことがあるからだ。

例えば、汚染水が海に放出されたとき、薄まって無害になる、と言った「専門家」がいた(と新聞に載っていた)。
この人が何の専門家なのだか知らないが、生物学、とくに生態学についてはドシロウトであることは明白だ。
海は単なる塩水の水たまりではない。
そこには膨大な生物がいて、食物連鎖があることを忘れていないか?
熱力学第二法則に従えば地球上に広く拡散してしまっているはずの金属などが、鉱床という形でまとまって産出するのはなぜか。
非生物的な過程で生じたものも多いだろうが、少なくともリンや鉄の鉱床の形成、それに石炭や石油には生物が関与している。

まあ、そういう大袈裟な話を持ち出すまでもなく、ぼくら自身が生物であり、生物に囲まれ、ともに生きているという感覚を忘れてはイケナイと思うのだ。

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