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2011/08/17

放射線と教育

来年から実施される中学校学習指導要領の理科では、約30年ぶりに「放射線」に関する記述が復活する。
この30年間、放射線についてまったく習わなかった若者(および中年?)がどっさりいるわけだ。

30年前、なぜ中学理科教育から「放射線」が消えたのか……。
原子力発電を推進するのに邪魔だから、アメリカでキリスト教原理主義者が進化論を排除したように……というわけではないだろう(と願いたい)。
そういや「進化」も消えたし、「銀河」も消えたし、中学理科から「どうだ、驚いたか!」的なスケールの大きな題材が消えてしまい、教材がつまらなくなって困ったものだ。
もちろん、ワシが制作した教材には、こっそり「発展事項」として付け加えたが。

もちろん、今回の中学理科の「放射線」の復活は、東日本大震災における福島第一原子力発電所のメルトダウンを受けたものではない。
学習指導要領の改訂は2007年(だったかな? 後で余裕があったら調べてみよう)に決まっていたので、地球温暖化対策を受けて原子力発電を推進する意図があったりしたのかも知れない。
とくに、核廃棄物の地層処分などの問題が山積みだから、「放射線はそんなに怖いものではない」と教育することで、「核アレルギー」を軽減しようとする思惑があったりしないか。

放射線教育フォーラム「放射線学習指導資料 中学校・高等学校における放射線に関する学習指導の手引き (改訂版)」2010年7月(PDFファイル)を読んで、そんなことを考えた。
次のような項目があるのだ(「てにをは」が変だが、原文のまま)。

(Q&A)少量の放射線(約100ミリシーベルト以内)であれば、全く心配することはない。この理由をなぜですか。

この質問への答えの中には、「低線量の被爆がほとんど影響がないか、むしろ健康に有益と考えられる事実がいくつかあります」なんていう記述もあるが、これらにチェルノブイリ周辺住民の健康追跡調査結果は含まれていない。根拠とする母集団の選定が恣意的で、科学的根拠に乏しいと言わざるを得まい。

また、放射線を受ける生物の体が小さく、細胞分裂活性が大きいほど、大きな影響を受ける(と、30年以上前に大学の「放射線生物学」で習った)。つまり、成長期の子供のほうが、成長しきった大人よりも危険だ、ということだ。
ハッキリ言って、(ワシを含めて)子育てを終えたジジイやババアは多少の放射線を浴びたってたいした影響はなく、ガンになる確率は高くなるかも知れないが、ガンになる前に死ぬかも知れないので、心配する必要はないだろう。
だが、成長期の子供や、これから子供を産んで育てようという若い世代にも、同じ危険を甘んじて受けろ、ということはできない。
だが、そのことについてはいっさい記述がない。

巻末には教員向けのメッセージとして、こんなことが書かれている。

原子力発電について一般社会人は不安を持っているようですが、この原因は何でしょうか。この資料で説明している放射線の人体影響についての正しい知識が行き渡っていないことも原因の一つを思われます。 もし大地震で原子炉施設が損壊を受けた場合でも、施設の主要部分は堅固な岩盤上に建設されているなど耐震性には十分に配慮された設計になっているうえに、原子炉の燃料体の構成は、燃料はせいぜい3~5%の低濃縮ウランであるので、原子爆弾のような爆発は起こりようがありません。運転中の原子炉に航空機が衝突したと仮定した場合も同様です。

3.11後の現在も、同じことを胸を張って言えるだろうか?
原子爆発は起きなくても、(原理は小学校の理科の実験と同じ)水素爆発によって圧力容器や格納容器が破壊されれば、おそろしく広範囲にわたって放射性物質による汚染が起こることが、わかってしまったのに?
そして、地震や津波について、現在の科学が知らないことが多いこともわかったのに?

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