« 証拠FD改ざんの謎 | トップページ | なぜ幼虫は道を横切るのか? »

2010/10/10

ノーベル賞

2008年にも同じタイトルで書いているので、次の点については重複するため割愛。
→評価されているのは30年前の研究
→日本での研究ではなくて、日本人研究者による海外での研究成果が評価されている

だから別のことを書こう。

そもそも、有機化合物をくっつけること(クロスカップリング)が、なんでそれほどすごいことなのか?

有機化合物とは、炭素を骨格とする化合物である。
糖やデンプンなどの炭水化物、脂肪、アミノ酸、タンパク質、合成樹脂等々、我々の身体自身から身の回りの品々まで、有機化合物だらけである。

さて、その有機化合物、とくに複雑な有機化合物を、単純な有機化合物へと分解するのは、比較的簡単である。
例えば、デンプンに水を加えて(こげないように注意して)加熱すれば、水飴状になる。
これは、デンプンが分解されて糖になったのだ。
さらに加熱して(燃やして)、無機物である二酸化炭素や炭(炭素の塊)にするのも、まぁ簡単である。

ところが、糖からデンプンを作るのは簡単ではない。
有機化合物の骨格である炭素同士は、熱エネルギーを与えて結合を切るのはたやすいが、結合させるのは難しい。
少なくとも、台所でやるのはムリだ。

そこで、はしっこに亜鉛やホウ素のくっついた有機化合物を使い、パラジウムという金属を仲立ちにして、うまいこと炭素同士を結合させる、という方法を発見したのが、今回のノーベル化学賞受賞者である(亜鉛を用いたのが根岸さん、ホウ素を用いたのが鈴木さん)。
高温や危険な物質が不要で、有害な副産物が生じることもなく、工業レベルで有機化合物合成が可能なので、医薬品から液晶や有機EL(発光素子)まで、広範に利用できる。
……ということで、試験管内で(サイズは工業規模でも)有機物の合成を行うのはなかなか大変なことである。
ところが、生物はアッサリと有機物の合成をやってのける。

動物や菌類は「必ず」有機物を食物として摂る。
肉を食えば、アミノ酸に分解(消化)して吸収し、細胞内に取り込んでから合成して、身体を構成するタンパク質に仕立て上げる。
イモを食えば、デンプンを糖に分解してから吸収し、エネルギー源として燃やす一方、合成してグリコーゲンとして蓄える。

植物は動物や菌類よりも進化しているので、有機物から有機物を合成するだけでなく、無機物から有機物を合成する。
単純な有機化合物の合成は、試験管内でも効率的にできるようになっているが(化学合成肥料が安く大量にできるものだから、環境問題を引き起こしたりするが)、複雑な有機化合物の合成は、まだ安上がりにできない。

だから、食料生産はいまだに「生物を育て、殺して食うこと」なのである。
食料合成を化学的(工業的)にできるようになったら、それもノーベル賞級の発明ということになるだろうか。

|

« 証拠FD改ざんの謎 | トップページ | なぜ幼虫は道を横切るのか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ノーベル賞:

« 証拠FD改ざんの謎 | トップページ | なぜ幼虫は道を横切るのか? »