炭は環境に優しくないのか?
深夜のテレビ番組「ぷっすま」で、「バーベキューの達人芸人」が、「バーベキューの後、残った炭を埋めてはいけない」と言っていた。
炭は分解されずに地中に残るので、環境に優しくないのだそうだ。
確かに、炭、要するに炭素の塊は有機物ではないので、微生物によって分解されない。
そのため、長期間にわたって存続する。
しかし、だからといって「環境に悪い」と言い切って良いものだろうか?
じつは、長期間、炭素の形で存在することが、大気中の二酸化炭素の削減に役立つ。
木炭は、過去数十年の間に樹木が吸収した二酸化炭素が原材料だ。
樹木を生育させ、木炭を作れば作るほど(そして使わずに置いておくほど)、大気中の二酸化炭素は減っていく。
それがどの程度、地球温暖化防止に役立つかどうかは不明だが……。
また、土に混ぜた炭は、表面に微細なデコボコがあることから、微生物のすみかとなる。
土に炭を混ぜることによって、微生物による有機物の分解が促進され、土が肥えるのだ。
表面がデコボコで内部がスカスカの多孔質であることから、炭は水質改善にも役立つ。
微生物による有機物の分解、つまり富栄養化対策になり、有害物質の吸着も期待できる。
それに、なかなか分解されないといっても、化学合成プラスチックと異なり、いずれは酸化される。
……という具合に考えてみると、炭は決して「環境に悪い」ものではない。
「環境に良いか悪いか」は、単純には決めつけることはできないのだ。
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コメント
こんにちは
化学合成プラスチックを害悪と言っていますが本当にそうですか?
化学合成プラスチックも天然のレジンも、炭が分解すると言うなら、こちらも炭同様に分解されるのではないでしょうか?
所詮は木炭も石油や石油製品も全て天然由来ですし、ごくごく普通の化学物質ではないでしょうか?
あと、炭は空気中で酸化されるのでしょうか?
ちょっと突っ込んでみました。
投稿: とおり | 2021/09/09 01:38
突っ込みありがとうございます。いろいろと考え直すキッカケとなります。
>化学合成プラスチックを害悪と言っていますが本当にそうですか?
化学合成されたプラスチックの問題点は、微生物によって分解されないので、なかなか環境中から消えてくれない、ということです。
マイクロプラスチックによる海洋汚染が非常に問題視されている所以です。
人体への影響も懸念されていますが、プランクトンの消化管にプラスチックが詰まって死んでしまうことの影響が大きいかなぁと思います。
プランクトンの大量死は、海洋生態系の崩壊に繋がりますから。
>化学合成プラスチックも天然のレジンも、炭が分解すると言うなら、こちらも炭同様に分解されるのではないでしょうか?
化学合成プラスチックも機械的あるいは光化学的に分解されていきますが、天然のプラスチック(セルロースやキチンなど)が微生物に分解される速度には敵わないでしょう。
なかなか分解されず、生態系の物質循環に戻っていってくれない物質は、いろいろと厄介です。
その意味では、ツンドラの泥炭なんかも天然由来の物質ですが、厄介ですね。
地球温暖化に伴って急速に分解されて、メタンを放出して温暖化を加速するそうです。
>所詮は木炭も石油や石油製品も全て天然由来ですし、ごくごく普通の化学物質ではないでしょうか?
石油はプランクトン、石炭は植物由来ですが、それをエチレンなどの低分子の炭素化合物にしてから、重合させて化学合成プラスチックを作っています。
いちど低分子にしてしまっているので、その段階で「天然由来」とは言いづらいのでは、と思います。
>あと、炭は空気中で酸化されるのでしょうか?
空気中の酸素分子が木炭や石炭の表面にぶち当たっているうちに、少しずつ炭素原子をもぎ取っていく……なんてことを想像していますが、実際のところどうなんでしょうね。
ちなみに、キャンプ用の木炭を10年ほど放置したら、酸化して痩せるよりも早く、湿気てしまいました。
火をつけたら、爆ぜて火の粉を散らすので往生しました。
投稿: M.SHI. | 2021/10/06 18:25