先週土曜日に電気量販店にデータ用DVD-Rとデータ用BD-Rを買いに行った。
先週不調に見舞われたノートPCは、結局30〜40分使用すると電源が遮断されるという不具合が再現したため、引き取り修理サービスに出した。
戻ってきたらリカバリディスクを作ろう、そうだ、録画用のディスクはあるけどデータ用のディスクがないから買っておこうと考えたのである。
ついでに、目にとまったBD/DVD両方入りの『第9地区』を買った。
BD搭載AQUOSを買ったものの、これまでウチにはDVDの映画しかなく、その点において実力を発揮していなかったのだ。
で、『第9地区』だが、食事時に家族で観るものではない。
まぁ、何と言ってもリアルに汚いのである。
主な舞台がスラムというか難民キャンプだし、その難民が「エビ」のような姿の異星人だし。
終盤は人体の損壊や粉砕が相次ぐので、まぁ、血の苦手な人は見ていられまい。
といっても、スプラッタ・ホラーではない。
SFである。
SFであるからして、ワシは大いに楽しめた。
カミさんにはウケが悪かったが、ムスメ(高3)は面白く観たようである。
とくに、異星人側の主人公であるクリストファーとその息子が良いそうだ。
人類側の主人公には感情移入できないと言っていた。
確かにそうだ。
主人公(であるはずの)ヴィカスは弱腰だし、利己的だし。
この主人公の造形は別の映画でも見たようだなぁ、と考えて思い出したのは、『未来世紀ブラジル』の主人公サム・ラウリーである。
サムも小役人だったね。
さて、以下ネタバレになるので、まだ観ていない人、結末を楽しみにしておきたい人は読まないように。
巨大な宇宙船が現れるが、その場所が南アフリカのヨハネスブルグ。
侵略するわけでも銀河連盟への勧誘でもなく、乗っていた異星人たちは難民状態。
いったい全体、どうして地球にやってきたのか、その理由は最後までわからない。
たぶん、(クリストファーの台詞の断片から考えるに)恒星間航行を可能にするための「液体」が尽きてしまったのだろう。
その「液体」にしろ、兵器の作動にしろ、異星人のDNAが「鍵」になっているらしい。
異星人の兵器は、地球人が引き金を引いてもウンともスンとも言わない。
「異星人のDNAを持つ手」が必要なのだ。
指令船を動かし、母船に星間航行させるための「液体」を浴びて、異星人のDNAを持つことになったヴィカスのように……。
ひとつ疑問なのは、ヴィカスが異星人に変容してしまうことから考えて、地球人と異星人のDNAはとても「似ている」はずだ、ということである。
異星人はネコ缶が大好物であり、卵にウシの死体から栄養供給していたことなどから考えて、アミノ酸にも互換性がありそうだ。
つまり、外見こそ大きく異なるものの、異星人と地球人とでDNAもタンパク質も、非常に似通っているはずだ。
それなのに、地球人では兵器が作動しないのは、非常に微妙なDNAの差が「鍵」になっているからだろうか。
もう一つ、それだけの兵器と科学力を持ちながら、なぜ異星人は地球で難民状態になってしまったのか、ということも気になる。
地球人を武力制圧することだってできたのではないか?
これについては(ドキュメンタリー風の構成なので)評論家風の人物が述べていた、「彼らはハタラキバチと同じであり、リーダーがいないので統制がとれていない」という理屈で説明がつくだろうか。
何か別の理由がありそうに思うが、それは続編で語られるのだろうか。
それにしても観ていて憂鬱になるのは、立場の弱いものに対して人間のとる、いやらしい態度である。
相手が知的・倫理的に劣っているという前提で相対し、抵抗すれば殺す。
そのくせ、バイリンガルなのは劣っているはずの側なのだ。
この図式は、人類の歴史で何度も「見た」光景である。
だからこそ、この映画の舞台として南アフリカが選ばれたのだろう。