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2010/06/02

人工生命は核廃棄物の夢を見るか

人工生命を創り出すことに成功した、というニュースをみたが、完全な「人工」ではない。
http://www.asahi.com/health/news/TKY201005200555.html
マイコプラズマという細菌の1種のゲノムをまねてDNAを合成し、別種の細菌のDNAと入れ換えて、その別種の細菌の細胞質を使って自己増殖することを確認した、というものだ。
ゲノムのモデルとなった細菌がいるし、細胞質も既存の細菌のものだ。

この実験が画期的なのは、人工合成したDNAが、ゲノムとして働くことが確認できたことである。
ゲノムとは、生物を構成する遺伝情報のワンセットである。
人工的につなぎあわせたDNAが、遺伝情報、つまり生命の設計図として使えることがわかったわけだ。

じつは、ゲノムの中には「使っていないんじゃないか」と思われる部分がある。
ジャンクDNAとかナンセンスコドン(遺伝暗号)と呼ばれている。
では、そのような「不要と思われる」DNAを除いた、「必要十分」なDNAの最小セットを用意したら、それでも「生命」として機能するのだろうか?

ミニマムな生命の設計図を探ったり、細菌に効率的に物質合成させるにはDNAの長い鎖のどこに目的の遺伝子を挟み込んだらよいのか調べたり、ということが、人工合成したゲノムを使うとやりやすくなる。
「生命の本質とは何か」を探ること、「細菌に医薬品などを生産させる」こと、この基礎と応用の両極端にあるような課題に切り込む手段になるのだろう。

DNAを自動修復するようなしくみをもった細菌が作れれば、環境中に放出された放射性物質を効率的に回収することができるかも知れない。
なにしろ高速増殖炉もんじゅの運転を再開し、核燃料を、そして核廃棄物も、大量に生産する準備が進められているし……。
核燃料サイクルは、実現する目途が立っていないにもかかわらず、なぜか地球温暖化対策の一つと見なされている。
核燃料サイクルが実現したとしても、老朽化して廃炉となった原子炉などの廃棄物は必ず、大量に出る。
ウチの庭に埋めていいよ、という奇特な人が現れて地層処分が可能になったとしても、絶対に生物圏(バイオスフェア)に放射性物質が出てこないとは、誰も言えまい。

せめて、回収するのに人工細菌を使えないかなぁと考えたが、もちろん、人工生命ゆえの危険性もある。
なにしろ、変化すること(=進化すること)が生命の本質であって、それは人工の生命であっても同じことだ。

どんな物質を生産するかわからない細菌、どんな物質をえさにするのかわからない細菌、増殖のコントロールができない細菌が環境中で勝手に振る舞い始めたら、生態系に深刻な影響があるだろう。

ワシらになじみのある植物や動物が消え失せ、地球の表面が灰色や赤色の細菌のマットに覆われるような事態になったら、困るよねぇ。
しかも、そのマットは夜になると燐光を発するのだ。
数万年、数億年という長い長い時間、崩壊し続ける放射性物質が放つ光である。
「創造主」亡き後、人工生命の末裔が地球を征服した未来の光景は、荒涼としているが、意外に美しいかも知れない。
もちろん、この光景を美しいと「思う」者は誰もいないだろう。

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