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2009/06/03

一酸化炭素の危険性

炭素を含む物質、つまり紙、木材、木炭、石炭、灯油、ガソリン、プロパンガス、都市ガス(メタンガス)などが燃えると、二酸化炭素と一酸化炭素が生じる。
「炭素の燃焼」とは、要するに炭素と酸素が結合することだが、炭素原子1個と酸素原子2個が結合し、二酸化炭素(CO2、炭酸ガス)ができる状態が「完全燃焼」である。

炭素だけからなるダイヤモンドが完全燃焼したら、全部二酸化炭素になって、灰も残らない。
「燃え尽きたぜ……。真っ白にもならないぜ」
というわけだ。
二酸化炭素は常温(20℃前後)常圧(1気圧)では、無色の気体で、無味無臭である。

炭素を含む物質が完全燃焼しなかったとき、つまり酸素不足のときには炭素原子1個に対して酸素原子1個が結合し、一酸化炭素(CO)ができる。
これが「不完全燃焼」で、きわめて危険な状態である。

昨日山口県のホテルで死者の出た事故は、一酸化炭素中毒の疑いがあるそうだ。
ボイラー室の階上の部屋で死者が出たのは、不完全燃焼で生じた一酸化炭素が「上昇」したからだろうか。
暖まった燃焼排気が周囲の空気に比べて軽いのはもちろん、同じ温度でも、一酸化炭素は空気よりもわずかに軽いのである。

高校の化学の復習だが、炭素、窒素、酸素の原子量をそれぞれ12、14、16として、一酸化炭素、二酸化炭素、空気1モルの重さを求めてみよう。
ちなみに、0℃1気圧のとき、1モルの気体の体積は22.4リットルで、6.02×10の23乗個の分子が含まれている。

一酸化炭素(CO)1モルの重さ……12+16=28(グラム)
二酸化炭素(CO2)1モルの重さ……12+16×2=44(グラム)
窒素(N2)1モルの重さ……14×2=28(グラム)
酸素(O2)1モルの重さ……16×2=32(グラム)
空気は窒素80%と酸素20%を混合したものとして、28×0.8+32×0.2=28.8(グラム)

……ということで、二酸化炭素(44グラム/モル)は空気(28.8グラム/モル)より遥かに重いため、下降する。
一酸化炭素(28グラム/モル)は空気よりもわずかに軽いため、上昇する。
3階建ての建物の2階で七輪を焚いたとき、完全燃焼すれば二酸化炭素が1階へ、不完全燃焼すれば一酸化炭素が3階へ行くはずだ。

……というのはあくまで理屈の上の話だが、高校の化学のレベルでわかる理屈である。

いや、待てよ。
一酸化炭素と空気の差程度だと、上昇しないだろうか?
暖まっていることの効果のほうが大きいかなぁ。
ボイル・シャルルの法則を使えば計算できるかな?
いやいや、拡散して空気と混ざることも考えないと。
こうなると、高校化学のレベルを超えるなぁ。

次に、高校の生物レベルでわかる一酸化炭素の危険性について。

狭い部屋で七輪を焚いたりして、酸素が不足すると危険なのは、酸素がすべて二酸化炭素に変わってしまい、呼吸に使える酸素がなくなるから……ではない。
酸素がなくなる前に、不完全燃焼によって一酸化炭素が生じる。
酸素呼吸する生物にとって、一酸化炭素は「毒ガス」なのである(これも無味無臭だし)。

ヒトを含めてセキツイ動物では、大気中から取り込まれた酸素は、血液中ではヘモグロビンと結合する。
血液が赤いのは赤血球という細胞が赤いから、赤血球が赤いのはヘモグロビンという赤い色素が含まれているから、というのは誰でも知っている知識だろう。

ヘモグロビンは、酸素と容易に結合したり、離れたりする性質を持つ。
ところが、一酸化炭素は酸素以上にヘモグロビンと結合しやすいのである。
しかも、一度結合すると、容易なことでは離れない。
ヘモグロビンは、酸素を運搬する能力を失うのである。
微量(1500ppm、つまり0.15%)の一酸化炭素を吸っただけで、ヒトは死に至る。

車内に流れ込んだ排気ガスや、換気の良くない部屋での石油ストーブなど、一酸化炭素中毒による危険は、割と身近にある。
車内に七輪や練炭コンロを持ち込んで、自殺を図る輩も居るが、ここで一酸化炭素中毒死に関するミニ知識。

ヘモグロビンは、鉄のイオンを含むため鉄サビの色、すなわち暗赤色をしている。
血液検査のときや献血の際に抜かれる血の色、静脈血の色である。
ヘモグロビンに酸素が結合すると鮮やかな赤色、つまり鮮血の色、動脈血の色である。
ヒトが赤い色を見て興奮するのは、獲物の血の色だからか、致命傷を負った仲間の血の色だからか、自分から出てきたらオオゴトな色だからか……。

それはさておき、ヘモグロビンに一酸化炭素が結合すると、さらに明るい赤色となる。
一酸化炭素中毒になった人の肌の色は、過剰なほど健康的なピンク色になるという(冬のテントの中などで、頭がボーっとしてきて、ふと隣にヤツを見ると頬がピンク色だったりしたらヤバイ)。
もちろん、一酸化炭素中毒で亡くなった人の肌の色も、つやつやとしたピンク色だそうだ。
その一方、一酸化炭素は神経伝達物質の作用も持ち、血管を拡張する。
そのため、ピンク色でぱんぱんの死体となってしまうそうである(見たことはないが)。

美しい自殺死体なんてものはないのである。

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