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2009/05/17

強毒ウイルスと弱毒ウイルス

H1N1インフルエンザウイルスの日本国内でのヒトからヒトへの感染が確認された。

TVニュースなどで、「今回のインフルエンザウイルスは毒性が弱いので、過度に恐れることはない」というように報道されることがあるが、これはちょっと違うのではないか。

弱毒性(低病原性)を「毒性が弱い」というように、文字通り解釈して、「大した症状は出ない」「感染しにくい」と勘違いする人が多そうで、よろしくないと思う。
低病原性ウイルスは、発症する部位が限られるので、症状が軽度な場合が多いのである。
今回のH1型ウイルスの場合、呼吸器や腸管で活性化するため、咳や下痢などの症状が出る。
もちろん、もともと呼吸器が弱かったり、他の病気で弱っていたりすると、症状は重篤になる。
また、「豚インフルエンザとサイトカイン・ストーム」に書いたように、若者のほうが症状が重くなる。

1918年から1919年のインフルエンザ(いわゆるスペイン風邪)の大流行(パンデミック)では、世界中で4000万人もの死者が出たという。
しかもそのヒトインフルエンザウイルスでさえ、致死率が数%なので、「低病原性」なのだ。
「高病原性」の鳥インフルエンザの場合、鳥の致死率は100%近い。
実際、1997年以降、鳥からヒトに感染したH5N1ウイルスの致死率は70%を超えている。

高病原性ウイルス、つまり強毒ウイルスがこのように「強力」なのは、ウイルスが全身で活性化するため、多臓器不全をもたらすからである。
このような強毒ウイルスと比較して「弱毒性」と呼んでいるのだ、ということを理解せずに、「大した症状は出ない」「感染しにくい」と思ってはいけないのである。

幸い、今回のウイルスにはタミフルなどの抗インフルエンザ薬が効くようである。
感染してしまったら、薬をもらって家でおとなしくしているのが一番のようだ。

参考:日経サイエンス2005年03月号「特集 インフルエンザの脅威」(このブログの記事「ウイルスは恐怖の対象か」参照)

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