Boichi作品集『HOTEL』を読んだ
Boichi作品集『HOTEL』(モーニングKC)を読んだ。
アーサー・C・クラークに献辞が捧げられているだけあって、ユーモアと皮肉を仕込んだ短編SF漫画集となっている。
やっぱり良かったのは表題作「HOTEL」、「すべてはマグロのためだった」かなぁ。
ファンタジーは(ワシは)あまりよく解らない。
絵がうまいのは確かだ。
SFとしての筋立ては、どこかで見たような気がしちゃうのは、古今のSF作家、漫画家、映画人たちがアレコレ挑戦し続けているのだから、仕方がないだろう。
その点、「すべてはマグロのためだった」では、畳み掛けるように様々なアイデア(とSF的法螺)が展開され、そのテンポに笑わせてもらった。
だって、マグロがいなくなった地球の代わりにエウロパをテラフォーミングし、その海でサンマを養殖しちゃうんだからね。
木星の衛星、エウロパ……クラークの『2010年宇宙の旅2』ではエウロパの海の生物が描かれていたが、その海に、サンマかよ。
どっかで見たような風景、どっかで読んだような筋立てながら、「HOTEL」は絵で魅せていると思う。
『2001年宇宙の旅』のような地球・月・宇宙船の配置、ゼラズニイの『フロストとベータ』(およびその他の多くの作品)のように人間の命令を守り続けようとするロボット。
「HOTEL」のコンピュータは、温暖化が暴走して金星化した地球で、宿泊客……人類から託された、地球上のあらゆる生物のDNA……を守るため、孤独な苦闘を続ける。
この、けなげに働き続けるロボットの話に弱いのかもなぁ。
太陽系から離れつつあるボイジャー、土星の衛星タイタンに着陸したホイヘンス、砂嵐と闘いながら観測を続ける火星上のローバーたち。
空を見上げりゃ、そこにけなげな奴らがいるのだよ。
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