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2007/08/17

生命の代謝起源説

『日経サイエンス2007年09月号』の「生命の起源 RNAワールド以前の世界」(R. シャピロ)を読んだ。

最初の生命がどうやって誕生したのか、現在もよく解っていないが、大きく分けると次の二つの仮説がある。

「レプリケーター起源説」は、RNAのような巨大なレプリケーター(自己複製子)が偶然に形成され、「RNAワールド」と呼ぶ自己複製分子の世界を作ったと説明する。

「代謝起源説」は、小さな分子どうしの化学反応のネットワークが(膜のような境界の中で)進化したと説明する。

レプリケーター起源説の弱点は、RNAのような巨大な分子が偶然に形成される確率が低いことだ。
その点、代謝起源説に立てば、宇宙のどこでも生命の発生が起こりうるという。
ただし、そのような化学反応ネットワークを、人工的に作ることにはまだ誰も成功しておらず、仮説の域を出ない。

だが、代謝起源説に基づいて、あちらこちらの惑星や彗星の表面上で生命が発生しているとしたら、かなり面白いのではないかと思う。

例えば、草や木はおろか、バクテリアのような生物すら見つからない太陽系外の惑星が、酸素を豊富に含む大気に包まれていたとしよう(SFのアイデアのようなものである)。
地球の大気中の酸素は、光合成細菌や植物が、光合成上の結果生成した「廃棄物」である。
つまり、酸素を多く含むような大気は、生物の関与なしに形成されないと思われる。

だが、その惑星の岩石の表面などで、「前生物」的な化学反応ネットワークによって酸素が形成されたとしたら? 
そして、次の化学反応の段階、酸素を用いて有機物を酸化分解する過程が、有機物の不足によって止まっていたとしたら? 
その惑星を訪れた地球人は、いい餌食になってしまうのではないだろうか?(だからSFだってば)

さらに、そのメカニズムを知った地球人は、地球のバクテリアを用いて、「前生物」的な化学反応ネットワークのカギとなる物質を分解してしまうとしたら……。
バクテリアを解き放てば、その惑星の「前生物」的な化学反応ネットワークは破壊され、もとへ戻すことは出来ない。
これは惑星規模の殺戮になるのだろうか?(生まれる前の生命を殺すことは罪か?)

……なんだか、誰かが書いていそうな話だねぇ(地球人が他の惑星の生物進化を阻害したことに対する報復……というテーマのSFに小川一水の『時砂の王』などがある)。

ちなみに、地球外で生命が誕生する確率も、RNA起源説と代謝起源説では異なる。
生化学者モノーによると、

「宇宙は生命に満ちてもいないし、人類の生活圏でもない。私たちは、モンテカルロのカジノで大当たりするような偶然から生まれたのだ」

ということになるが、生物学者カウフマンによると、

「もしこれがすべて本当ならば、生命は思ったよりもずっと誕生しやすいものということになりそうだ。私たちは宇宙の中に住んでいるだけでなく、まだ見ぬ仲間とその住処を共有している可能性が高い」

ということになる。
どちらの考えが正しいのかは、宇宙へ出てみないと判らない。

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