『学校では習わない江戸時代』を読んだ
山本博文著『学校では習わない江戸時代』(新潮文庫)を読んだ。
宮部みゆきの江戸ミステリーやら、子供の自由研究やら、そのへんから江戸時代についてちょいと興味を持って調べたりしている。
しかし、時代劇には興味がない。
時代小説も、ミステリーでないと面白くない。
つまり、武士の本分とかお家騒動とか剣豪とかそういったものにはまったく興味がないのである。
興味があるのは、人々の暮らしである。食べ物や遊び、自然観や芸術、技術である。
その意味では、本書は人々の暮らしそのものについて記したものではなく、人々の暮らしのバックボーンにあった制度などについて記したものである。
時代劇などで描かれた江戸時代は、いわば「漫画化」したようなもので、歪曲されている。
その歪んだ「江戸時代観」を正し、実像に迫ろうというものである。
例えば……。
諸藩の留守居役。
吉原で寄り合いをしたりして浪費すること、どこかの国の政治家や役人のようである。
だが一方、重要な情報の交換や人脈の形成に大いに役立っていたので、諸藩も留守居役の贅沢を止められなかったとか。
日本の民主主義がなかなかクールで知的なものにならないのは、こういう歴史があるからかなぁ。
参勤交代が実に大変な行事であったこと。
途中で大名同士がかち合わないようにダイヤグラムを引いてスケジュール調整したとか、なかなか大変そうである。
その他、なぜ赤穂浪士は討ち入りをせざるを得なかったのか、「鎖国」の実態はどのようなものだったのか、中国や朝鮮との関係はどうだったのか、等々、史料から紐解かれる事実の数々は、なかなか興味深い。
危機管理についてチクリと書いてあったのも、よかったね。
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