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2004/08/15

朝日新聞、「進化」を誤用する。

今朝(8月15日)、朝日新聞朝刊1面の見出しを見て、長年の購読をやめてしまおうかと思った。

「谷 進化の力」

生きているうちに進化することはできないことは、すでに何度も書いているとおりだ。
ポケモンは「進化」しない
覚書

まったく、天下の朝日新聞が何というザマだ。
ちなみに、asahi.comでもこんな具合だ。

恋よりメダル 進化する女王――ケー・スンヒ(柔道)

ワシがこれだけ腹を立てているのは、単純に生物学用語の誤用(「フェロモン」参照)だからというわけではない。
ひとつには、今の学習指導要領では、小学校でも中学校でも、科目選択によっては高等学校でも、「進化」について学ばないからだ(「「歴史科学」としての生物学」参照)。
進化についての正しい知識を持たずに、自然・人間・社会について、まっとうな視点を持てるものかどうか危惧しているのだ。
子供たちが進化についての正しい知識を持たないと、ファシズムやカルト宗教に汚染されやすくなるのではないかと思っているからだ。

もうひとつの理由は、字面のイメージによって、ことの本質がすりかえられることへの危機感だ。
生物学的な「進化」には方向性がない。
洞窟の魚の目がなくなるのも、ミノガのメスから羽や口がなくなるのも、進化だ。
だが、誤用される「進化」は、「良くなる」「進歩する」「発展する」「高機能になる」というイメージを助長するものだ。
ナチスによる遺伝学の悪用が思い起こされたりもする……。

ちょっと話がずれるが、字面のイメージによる本質のすりかえ、という点では、60年前に「国家によって」盛んに使われた言葉を思い出す(ワシが直接聞いたわけではないが)。
退却、撤退を「転進」と言い換え、全滅を「玉砕」と言い換え、犬死を「名誉の戦死」と言い換え、国民を戦場へと追い立てたのだ(その上、国土を戦場化させた)。
朝日新聞は、戦時中に軍部のプロパガンダの一翼を担ったことを反省していたのではなかったか?
誤った言葉の使い方に鈍感になってしまってよいのか?

『日経サイエンス』2004年9月号の「遺伝子ドーピング」(H.L.スウィーニー)では、筋肉疾患を治すための遺伝子治療を悪用して、筋肉を増強できる可能性が示されていた。
それだけではなく、遺伝子変異のために「自然に筋肉が増強されてしまう」人や「赤血球が非常に多くなる」人の例が挙げられていた。
「進化」という言葉を気楽に誤用する記者は、こうした遺伝子やスポーツと倫理の問題について、どう考えているのだろうか?

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